October 29, 2005

信州への旅  第十

ホテル志賀サンバレー

このホテルは誉めておかねばならない。拍手

宿というものは、その立地する環境条件という自然に与えられた景観などを基本としつつ、宿としてゲストに対する独自の配慮というサービスを提供できなければならない。

これが施設・設備にばかり目がいっているようでは、いかに資本注入量が大きくても湯田中温泉の『ど田舎観光ホテル』と変わらない。

『仏作って魂入れず』の喩えと同じである。

このホテル、写真に示したように外観はレンガ色に統一され、隣り合うヨーロッパアルプスにあるロッジ風のホテルなどと共に山のホテルらしい雰囲気を醸し出している。

写真手前に車の進入路があり、左上には駐車場を設け、施設の裏側は斜面となり沢となっている。

施設に面して(写真では手前)スキー客用のリフトがあり、シーズン中に訪れるゲストたちにとっては素晴らしい立地となるのであろう。

近くには丸池、信州大学の教育園があり、夏でも動植物の観察には高原気候ともあいまって良い環境条件を揃えている。

さて、このホテルであるが、主にはスキーシーズンの宿であることは言うまでもない。
このホテルに限らず志賀高原のホテルは悉皆同様である。


そこで施設の通年営業を考える場合、当然季節ごとの運営についての企画が重要になるが、競合する他のホテルとの差別化を図り、独自性を強調できるものにしなければならない。

と薀蓄を並べ立てても、私はこのホテルの1年を通した企画を知らないし、隣接するホテルの企画も知らないから比較することができないので、この件に関してはここまでとし、気に入ったことと、気掛かりなことについて一言。

先ず、食事内容が良い。

料理素材、品数共に良いし、味付けも良い。

更に、温かいものを温かい状態でテーブルに運んでくる。

これは料理を提供する上で大切な要件の1つである。

それにサプライズを加味している。

一人用の小さな鉄板焼を供することは多々あるし、焼く物も大体似たり寄ったりである。

ここは椎茸の栽培木を出し、ゲストがハサミで切って椎茸を焼くということをやっている。

更に食後、椎茸菌を植え付けてあるその原木を持ち帰っても良いとしている。

我が家ては既に新しい椎茸が育っている。

これは面白い企画であると私は思った。

レストラン・スタッフの対応も、とても感じの良いものであった。

勿論全てが良いというわけではない。

スキー客相手がメインとなるホテルゆえに、部屋に入った辺りは雪によって濡れるため、畳部分との段差を無くす簡易の箱状の床を設置してあったが、これのクッション、反響音が気になるところである。

丁度、写真教室の団体客が同宿していたのだが、彼らが早朝の撮影に出発するため、午前2時ごろから4時ごろまで動き回っている音が耳について熟睡できなかった。

これは建物の構造上からくる問題だったかもしれない。

しかし団体のゲストが早朝に出発することは、ホテル側として事前に分かっていたはずなので、他の客に対する配慮が足りなかったことは責められても仕方ないであろう。

夕食朝食共にレストランであったため、細やかなサービスが可能であったと考えられるが、それにしても食事に関しては申し分のないものであったと考える。

当然、宿泊料金に比してであるが。

ついでに付け加えれば、露天の家族風呂。

これを建設するために建物裏側の法面を利用した工夫は誉めて良いし、多くのゲストに供することを考えれば時間制にしたのも良いアイディアであると思うが、有料にまでしたのは、折角のアイディアがゲストのためにというより商売っ気を感じさせて、ちょっとつまらなく思えたことであった。

しかし、総合的には良い評価を与えてよいホテルであると判断した。

at 10:29│
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