February 04, 2007

しばし横道へ (浪速野菜を食す)

2月1日。

息子が33歳の誕生日を迎えた1月24日、私は韓国・ソウル南方のスウォン(水原)でMs.Marthaのガイドでファソン(華城)を見学していた。

これまで息子の誕生日に家を離れることは無かったのだが、息子の仕事が忙しく共に誕生日を祝ってやることが出来ないので、今回は私の旅行を優先させて小正月明けから韓国へ行っていたのだ。

その息子も家内も揃って時間を空けることができたので、少し遅れたけれど誕生祝いの食事会を2月1日に『ぶどう組』で持った。
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ぶどう組というのは当ページからもリンク出来るようにしているが、幼稚園のクラス名ではなく、上の写真のエクステリアから分かるように民芸風居酒屋をイメージしていただければ良い。

店内照明は照度を下げ、古材を主にしたインテリアで、どことなく温かさを感じる店である。

用いられている器も陶器が多く、こうした点でも何かほのぼのとするのである。
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少し食したが、多分50センチ強の鯖であろう、脂の乗り具合はこれ以上は無いという“トロ鯖”の『きずし』であり、思わず写真に撮ってしまった。

関東では『締め鯖』と呼ぶように、鯖を3枚に下ろして充分に塩で締め、更に酢で締めた料理である。

鯖の生き腐れ』という言葉があるように、鯖は痛みやすくて『足が速い』、つまり腐りやすい魚の代表格のように扱われてきた。

だから、しっかりと塩をするという保存法が生まれ、海に遠い京都へは日本海の若狭地方から『塩鯖』を運び込んでいた。

現在でも若狭街道のことを『鯖街道』と呼ぶ所以である。

この『塩鯖』を更に酢で締めて殺菌するという食べ方も、鯖の足の速さや流通が現代ほど発展していなかった頃のことを考え合わせると、昔の人々の素晴らしい知恵が生み出したものであったことが分かる。

私が子どもの頃、『きずし』が酢で締められ、その身が白く漂白されて、食感は湿り気があるもののパサパサした感じが嫌いで仕方が無かった。

現在でも板前たちは余程新鮮なモノ以外、鯖を生の刺身で提供することはしない。
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きずし』の鯖の色合いを見せるために、あえてフラッシュを焚いて写真を撮ってみた。

見事な色合いである。

添えてある『ボケの花』の色に比しても分かるように、血合いの色が鮮明である。

つまり、ほとんど酢で締める必要も無く、刺身として提供出来る鯖なのであり、事実、食酢の味を抑えた美味しい私好みの『きずし』であった。

真鯖(まさば)は日本各地で獲れる回遊魚であるが、根付きの鯖もいる。
つまり、小魚を求めて広く回遊せず、一定の海域に留まる鯖である。
今や有名ブランドとなってしまったが、豊後水道・佐賀関に揚がる『関サバ』、同じ海域で愛媛県・佐田岬の三崎漁港に揚がる『三崎サバ』(岬さば・・ハナサバと呼ぶ)、九州・五島列島周辺で獲れる金色をした『ゴンサバ』。
いずれも美味しい鯖であるが、流通状況の良い現代、産地にこだわらずとも美味しい鯖は何処ででも食べられるようになった。

真鯖が美味しいのは秋から冬であり、春の産卵時期から夏にかけてはイマイチである。
もっとも、夏は夏で『ゴマサバ』が美味しいのだが・・・

下の写真は、カウンター内で調理中の主人と、作業を見守る御内儀。
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漏れ聞くところによると、この主人、板前修業はおろか、調理師学校にも通ったことがないそうな。

しかし、食材の見分け、調理に関する技術、盛り付けの感覚など一流どころに引けを取らない。

これは天性の才と言えるものかもしれない。

コロと水菜のハリハリ風”煮物の小鉢から、京野菜の“九条ネギの焼き物”、九条ネギの青い部分を用いた“チヂミ"、それに、大阪・なにわ野菜の“田辺大根"を用いた『おでん』に、香ばしい『ブリ大根』と、冬の味をしっかりいただいた。

伝統の『京野菜』、復活に力を入れてる『なにわ野菜』、主人と御内儀の安全で美味しい食材探しは全国を股にかけたものだとか。

棚に並べられた日本酒、焼酎も珍しい銘柄が多いが、仕入れには直接蔵元を訪ねて歩いているとのこと。

店で使用している陶器も民芸調のものが多く、御内儀自ら土をひねっているのだとか。
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息子の誕生日を美味しい料理と酒で祝ってやることができた。

感謝感謝である。

ちなみにぶどう組へは近鉄奈良線・小阪駅下車、高架線路に沿って西へ、交番を南へスグ。

日曜日が定休日・夕刻5時より開店


at 17:54│
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