October 15, 2009
ロシア女性と広島で再会
飛行機にも途中降機(stop over)というものはある。
乗り換え(transit)ではなく到着空港の外へ出てしまうことだが、JRは国鉄時代から途中下車という制度を取り入れている。
出発駅から目的地駅までの乗車券で、その行路上にある途中の駅で下車し(改札口を出る)、以後改めて目的地へ向かうために乗車できる制度である。
これには乗車券の有効期間内であるとか何百km以遠であるとかの規定があるが、私はこの制度をよく利用する。
日程の決まった仕事で他の土地を訪れる場合は単純往復が多かったが、時間的に余裕ができた今は新大阪・博多間では友人が多く住む広島に立ち寄ることにしている。
今回はロシア女性と広島で再会するという目的が加わったので途中下車が一層楽しく嬉しいものになった。
彼女は友人達と一緒だという。
デートに指定された場所は縮景園の広島県立美術館であった。
何度も来ている所なのでよく分かっている。
エスカレーターで上階に上がっていく途中、久し振りに会えるのだとワクワクする気持ちを抑えられなかった。
このような気持ちになるのも全く久し振りのことである。
指定されたフロアで真っ先に彼女に会おうと進んで行った。
いた。
※ 『国立トレチャコフ美術館展』“忘れえぬロシア”カタログP.82より。
Ivan Nikolaevich Kramskoy 1883 Oil on canvas 76.1×102.3cm
イワン・クラムスコイ 1883年 油彩 キャンヴァス 76.1×102.3cm
ちっとも変わっていない。
もう何年前になるのだろうか、彼女に初めて会ってから。
彼女の名前は『An Unknown Lady』。
そう、知らない女性。 名前は分からないのである。
でも、彼女の住まいは分かっている。
ロシア・モスクワのトレチャコフ美術館である。
雪が積もる厳しい寒さのロシアの町で、大通りに光彩を放つ彼女はいったい何者なのか・・・
やはり美しい女(ひと)だと思う。
私達の何年かぶりのデートを邪魔する人も少なく、静かな落ち着いた雰囲気の中で長い時間語り合うことができた。
下の女性は彼女と共にやってきた『女鉱夫』。
※ 『国立トレチャコフ美術館展』“忘れえぬロシア”カタログP.110より。
Nikolai Alexeevich Kasatkin 1894 Oil on canvas 65.4×45.0cm
ニコライ・カサトキン 1883年 油彩 キャンヴァス 65.4×45.0cm
クリミア戦争で負けたロシアは国家体制の建て直しを図るために工業化へ力を入れ始めた。
この絵が描かれた時代は丁度シベリア鉄道の建設工事が始まっていた頃で、工業化への資源として石炭は重要な鉱物であった。
そのため炭鉱での採鉱・選鉱は重要な仕事ではあったが、今流に言えば3Kの仕事である。 つまり『きつい』『きたない』『危険』という。
しかし、どうだろうか、彼女の表情は。
労働についての辛さや厳しさはあるかもしれないが、彼女の体つきや微笑む表情からそのような暗さは感じられない。
むしろ彼女の優しさや人柄の良さを私は強く感じるのだ。
この時代、ロシアの工業は大いに発達していくことになるのだが、国家体制には多くの矛盾を生じて社会不安が増大し、ロマノフ王朝は1917年のロシア革命によってツァーリ専制政治の幕を下ろすことになるのである。
19世紀のロシアにおける写実主義と印象主義の絡まる絵画を集めた今回の展覧会の絵画を単に絵を鑑賞するだけでなく、もう一歩、当時のロシアの国家体制に関わる政治や経済などと共に人々の考え方や暮らしぶりなどを予備知識として持って見たならば一層素晴らしい秋のひと時を過ごすことができると思う。
広島での会期は10月18日までである。
もう一度会いに行きたいが、3日しかない。 あぁーーー
乗り換え(transit)ではなく到着空港の外へ出てしまうことだが、JRは国鉄時代から途中下車という制度を取り入れている。
出発駅から目的地駅までの乗車券で、その行路上にある途中の駅で下車し(改札口を出る)、以後改めて目的地へ向かうために乗車できる制度である。
これには乗車券の有効期間内であるとか何百km以遠であるとかの規定があるが、私はこの制度をよく利用する。
日程の決まった仕事で他の土地を訪れる場合は単純往復が多かったが、時間的に余裕ができた今は新大阪・博多間では友人が多く住む広島に立ち寄ることにしている。
今回はロシア女性と広島で再会するという目的が加わったので途中下車が一層楽しく嬉しいものになった。
彼女は友人達と一緒だという。
デートに指定された場所は縮景園の広島県立美術館であった。
何度も来ている所なのでよく分かっている。
エスカレーターで上階に上がっていく途中、久し振りに会えるのだとワクワクする気持ちを抑えられなかった。
このような気持ちになるのも全く久し振りのことである。
指定されたフロアで真っ先に彼女に会おうと進んで行った。
いた。
※ 『国立トレチャコフ美術館展』“忘れえぬロシア”カタログP.82より。
Ivan Nikolaevich Kramskoy 1883 Oil on canvas 76.1×102.3cm
イワン・クラムスコイ 1883年 油彩 キャンヴァス 76.1×102.3cm
ちっとも変わっていない。
もう何年前になるのだろうか、彼女に初めて会ってから。
彼女の名前は『An Unknown Lady』。
そう、知らない女性。 名前は分からないのである。
でも、彼女の住まいは分かっている。
ロシア・モスクワのトレチャコフ美術館である。
雪が積もる厳しい寒さのロシアの町で、大通りに光彩を放つ彼女はいったい何者なのか・・・
やはり美しい女(ひと)だと思う。
私達の何年かぶりのデートを邪魔する人も少なく、静かな落ち着いた雰囲気の中で長い時間語り合うことができた。
下の女性は彼女と共にやってきた『女鉱夫』。
※ 『国立トレチャコフ美術館展』“忘れえぬロシア”カタログP.110より。
Nikolai Alexeevich Kasatkin 1894 Oil on canvas 65.4×45.0cm
ニコライ・カサトキン 1883年 油彩 キャンヴァス 65.4×45.0cm
クリミア戦争で負けたロシアは国家体制の建て直しを図るために工業化へ力を入れ始めた。
この絵が描かれた時代は丁度シベリア鉄道の建設工事が始まっていた頃で、工業化への資源として石炭は重要な鉱物であった。
そのため炭鉱での採鉱・選鉱は重要な仕事ではあったが、今流に言えば3Kの仕事である。 つまり『きつい』『きたない』『危険』という。
しかし、どうだろうか、彼女の表情は。
労働についての辛さや厳しさはあるかもしれないが、彼女の体つきや微笑む表情からそのような暗さは感じられない。
むしろ彼女の優しさや人柄の良さを私は強く感じるのだ。
この時代、ロシアの工業は大いに発達していくことになるのだが、国家体制には多くの矛盾を生じて社会不安が増大し、ロマノフ王朝は1917年のロシア革命によってツァーリ専制政治の幕を下ろすことになるのである。
19世紀のロシアにおける写実主義と印象主義の絡まる絵画を集めた今回の展覧会の絵画を単に絵を鑑賞するだけでなく、もう一歩、当時のロシアの国家体制に関わる政治や経済などと共に人々の考え方や暮らしぶりなどを予備知識として持って見たならば一層素晴らしい秋のひと時を過ごすことができると思う。
広島での会期は10月18日までである。
もう一度会いに行きたいが、3日しかない。 あぁーーー
at 05:25│